フェラーリ代表アリバベーネが更迭、彼がもたらしたチーム改革は実を結んだのか?


2019年1月8日、新年を迎えてから噂されていたニュースが正式発表され、スクーデリア・フェラーリ代表を務めてきたマウリツィオ・アリバベーネがチームを離脱することが決定しました。


2014年末に低迷していたチームを再建すべく重要なポストについた彼は、4シーズンに渡ってその指揮を執り、2007年(コンストラクターズでは2008年)以来遠ざかっているチャンピオンシップ制覇を目指してきました。


ですが、フェラーリはアリバベーネに代わり技術部門のトップであったマッティア・ビノットを新たにチーム代表に据えることを発表し、アリバベーネ政権は実質2018年限りで終わることに。


では、そんな彼が取り組んできたフェラーリの復権と、元々ビジネスマンであった彼がF1にもたらしたものとは一体何だったのでしょうか。


スクーデリア・フェラーリがチーム代表に求めるもの

かつてF1チームの代表と言えばレースの畑で生きてきた人物がチームを作り、それを率いることが一般的でした。


ですが、現在のF1ではそういうケースは稀の部類に入ります。


自らF1チームを作ることは非現実的と言っても過言ではなく、現在参戦しているチームを率いることを目指すのがF1チームを運営したい人の目標だと言って良いでしょう。


とは言え、そのポストに抜擢される人物の多くがレースに関連した分野でステップアップを遂げており、メルセデス代表のトト・ウォルフやレッドブル代表のクリスチャン・ホーナーも元々はレーシングドライバーとしての経歴を持っています。


チーム運営においてレースに対する深い理解度は当然必要だと思われますが、それ以上に統率力というものが重要視されるケースも近年目立ってきていることは事実です。


その典型的な例が今回アリバベーネを更迭したスクーデリア・フェラーリ。


バックにフィアットグループが付いていたり、世界的な企業との繋がりが多かったりと、この近辺にはエリートビジネスマンが活躍することから、こうした付き合いの中でそれらの人材がヘッドハンティングされることも少なくありません。


もちろん、これはF1チームの間でも頻繁に行われることですが、こうした様々な能力を持った人物のなかからフェラーリはレースとはそれほど関わりが深くない人材をF1チームの代表を指名してきました。


アリバベーネの前任であるマルコ・マッティアッチも経営やマーケティングのスペシャリストで、フェラーリやマセラティの販売拡大に大きく貢献し、フェラーリ北米部門のCEOからスクーデリア・フェラーリの代表へと階段を上っていきました。


また、アリバベーネもレースとは深いキャリアは持っておらず、フィリップ・モリスの副社長を務めました。

またイタリアのサッカーリーグ、セリアAの名門ユヴェントスの役員も務めた経験が買われたのスポーツカテゴリーに精通している安心感もあったのかもしれませんが、フィリップ・モリス時代にはフェラーリと深い関係を築いていたことが抜擢な大きな要因だったとみられています。


チーム代表にはあらゆる能力が求められ、プレス対応やチームの方針を示すことに加えて、カリスマ性といった統率力が欠かせません。

特に今回のように大組織のトップが交代する場合には、権力闘争などの要因も加わりますが、2014年以降のフェラーリはレーシングチームから代表へ昇格したのは2008年のステファノ・ドメニカリ以来、実に10年ぶりのことになるのです。


今回の交代はチャンピオンシップを獲れないフェラーリが見出した新しい方向性ではありますが、2018年に亡くなったフェラーリ会長セルジオ・マルキオンネの影響が大きかったと考えられています。


そして、アリバベーネもこうした影響力の強い人物に手腕を買われて代表の座につきましたが、残念ながら目標だったチャンピオンシップ制覇は叶わないまま、更迭されることになってしまいました。


アリバベーネがフェラーリにもたらしたものとは?

では、そんなアリバベーネが代表を務めた期間にチームにはどんな変化が起きたのでしょうか。


2014年末、彼がフェラーリ代表に就任した年、チームは散々とも言える不本意なシーズンを終えたばかりでした。


フェルナンド・アロンソとキミ・ライコネンという2名のチャンピオン経験者を起用し話題を呼びましたが、新たに導入されたパワーユニットや空力規定に対応出来ず、フェラーリは21年振りの未勝利。


前任のマッティアッチは1年限りで解任され、チームの再建にも時間がかかるとみられていました。


ですが、セバスチャン・ベッテルの加入をきっかけに2015年は速さを取り戻し、就任2戦目となったマレーシアGPでは早くも優勝を達成し、シーズンを通しても王者メルセデスに次ぐ位置にまで復活を遂げます。


2016年こそ未勝利に終わったものの、勝利を争えるマシンを引き続いて作り上げ、空力規定が変わった翌年にはタイトルを争える速さを発揮するチームにまで成長を見せました。


さらに2018年は前年以上に速さに磨きがかかったマシンによって、タイトル争いの本命にも位置付けられるポジションにまで返り咲くこととなります。


しかし、タイトルを争った過去2年間で最終目標であるタイトル獲得には手が届きませんでした。


この期間、チームはマシンのスピードそのものを大幅に向上させることに成功しましたが、マシントラブルが目立つなど、信頼性を犠牲にしてポテンシャル向上に集中してきました。


そして、2018年は信頼性の向上にも成功し、まさに勝負のシーズンとなった訳ですが、アリバベーネ自身もそこで会長の死やチームスタッフなどの急死など、どうにもならない困難な状況があったと振り返っています。


そういった部分からかレース戦略で遅れを取ったり、チームとドライバーの双方に浮足立ってしまう場面があったことは悔やまれますが、ひとまずチーム体制の改革は過去4年間で上手くいったことも多かったと言えるでしょう。


アリバベーネが代表に就任する前年の2014年から獲得ポイントの推移を見てみると、


2014年 216ポイント 

2015年 428ポイント 

2016年 398ポイント

2017年 522ポイント

2018年 571ポイント


このようにほぼ右肩上がりでチームが成長してきたという結果も読み取れます。


大規模な空力規則変更に対応出来るチーム作り

彼がフェラーリを指揮していた期間で最も特筆するのが2017年のことです。


この年、フェラーリが久々にタイトル争いに加わったという意味でも大きなシーズンとなりましたが、それ以上にチームカラーが大きく変わったことを感じられたのが開幕戦オーストラリアGPでした。


実はその開幕前に引き続いてきた空力に関するマシン規定が大きく変わることに。


ラップタイムにしてラップ当たり5秒速くなると言われたこの規定改革でしたが、近年のフェラーリはそういった新規定にことごとく苦しめられてきたのです。


特に空力のレギュレーションが大きく変わった2009年、2012年、2014年は技術的な抜け穴を見つけることが出来ず、開幕で大きく躓いてしまうのが恒例でした。


ですが、この年のフェラーリは一味違い、開幕戦から速さを発揮出来るマシンに仕上げることに成功。この開幕戦でベッテルが優勝を飾り、中盤戦まで選手権をリードする活躍を見せたのです。


もちろん、これはチーム代表だけの功績ではないでしょうが、そういったレギュレーションへの対応力がチームとして備わったことを証明した1戦でもありました。


そして、今回彼は更迭が決まったこのオフシーズン、F1には再び空力規則の改定によってファクトリーは慌ただしい時期を過ごしていますが、その対応力を再び発揮できるかという点に、より大きな注目が集まることになりそうです。


後任のビノットはこの技術部門を統括してきただけあって、過去数年のマシンパフォーマンスに良い影響を与えてきましたが、チーム代表としてスクーデリア・フェラーリをあと一歩前進させられるのか。その手腕次第でアリバベーネの評価を大きく変わることになりそうです。