若手スペイン人が皇帝を周回遅れに。フェルナンド・アロンソがスターになった日々

更新日:2019年1月9日


©F1'nder

2018年の最終戦アブダビGPは、1人のF1王者にとっての引退レースだった。


311戦目を迎えたフェルナンド・アロンソにとっては、これが最後のF1での走りになるかもしれない。


これまで2度のシリーズ制覇、32回の優勝、そして22度のポールポジションなど、まさしく21世紀を代表するドライバーの戦いは、入賞にも届かない11位でのフィニッシュで幕を閉じた。


同じ時代にタイトルを争ったルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテルとの3人で行われたドーナツターンは、2018年シーズンのフィナーレにセンチメンタルな雰囲気を与えた。


そんなアロンソも37歳となったが、彼が初めてF1にやって来たのは19歳の時。


非力なイタリアンチームとなっていたミナルディからデビューを飾ると、後方での争いなががらも非力なマシンを駆る新人が、F1の先輩たちを追いかけ回す姿に痛快さを感じたファンもいただろう。


その翌年には自身のマネージャーであるフラビオ・ブリアトーレの勧めでルノーのリザーブドライバーに就任すると翌年には昇格を果たし、ここから彼の本当のF1キャリアが始まった。


近年はドライバーの見定めに使われる時間も短くなりつつある。

新しくF1にやって来たこのドライバーはトップチームに相応しいドライバーなのか、などと言った議論がメディアやファンの間でも交わされるが、その見定めはいつも正しい訳では無かった。


しかし、ベンチマーカーと呼ばれるドライバーたちがまだ多く居た時代でも、アロンソはすぐにトップチームへのチャンスを手にした。これを言い換えると彼の技量を見定めるのにそう時間がかからなかったということ。


そして、フル参戦2年目となった2003年、アロンソは戦えるマシンを手にして驚異的な実力をついに発揮する。


移籍2戦目でポールポジション獲得の快挙!

2003年の第2戦マレーシアGPでF1界に衝撃が走った。


グリッドに帰ってきたばかりの21歳が名門たちを抑えて堂々のポールポジションを獲得したのである。


この記録は当時の史上最年少記録、無名からデビューだったアロンソはこれを機に未来のチャンピオン候補に挙げられるようになった。


しかし、灼熱のマレーシアと呼ばれるセパンでのレースは、また技術面だけでなく体力面においても高いフィジカルが要求される。そのため、レースは一筋縄にはいかないだろうと言う意見もこの時はまだ聞こえた。


さらに、この絶好の舞台で彼は慣れない気候のせいか38度を超える高熱に襲われ、万全とは言えない状況でのレースを強いられた。


最終的に、レースでは同じく初優勝をかけて臨んだキミ・ライコネンを勝利を譲ることになったが、アロンソはこのレースで自身初の3位表彰台でチェッカーを受けた。


表彰台上では流石に苦しそうな表情を見せたが、彼のドライビングだけを観ると決して高熱に侵されたドライバーには見えなかった。


1位ライコネン、3位アロンソという2001年デビュー組の大活躍は長く続くシューマッハ時代の終わりを予感させた1戦となり、アロンソはその予感を次々と実現していくことになる。


皇帝シューマッハを周回遅れにしたニューヒーロー

そんなマレーシアGPでの活躍によって彼の初優勝はもはや秒読みと見られていた。


アロンソは続くブラジルGP、さらに母国スペインGPでも表彰台を獲得し、その勢いは日に日に増していった。


そして、第13戦ハンガリーGPでついに(と言ってもまだ30戦目で)記念すべき瞬間を迎える。


タイトルを争う上位陣が揃って後方に沈むなか、アロンソはモナコのように抜きにくいハンガロリンクで、見事シーズン2度目となるポールポジションを奪う。


いざ、レースが始まると会心のスタート決め、その後はトップを独走。ピットストップのタイミングで1周のみトップを譲ったが、69周に渡ってリードラップを記録する圧勝を見せたのだ。


しかし、それ以上に大きな話題を呼んだのが、この日アロンソが皇帝シューマッハを周回遅れにしたことだった。


この話題は当然シューマッハにも向けられ、「アロンソはあなたの後継者になると思いますか?」という質問に皇帝は表情を曇らせた。


そして、2005年と2006年にアロンソは、そんな赤い皇帝に代わって2年連続でF1王者に輝く。


これは現在でいうとマックス・フェルスタッペン(レッドブル)にも言えることかも知れないが、本当に速いドライバーには経験のための時間は必要としないのかもしれない。


その実力以上に不遇な期間を過ごし、2018年末を以ってF1を去る彼にはF1復帰の可能性も噂されている。

もし、彼が本当に復帰を果たし再び勝利を飾った時には、この時の初優勝以上に衝撃的な戦いぶりを見せてくれるのだろうか。


近年のF1では、ドライバーの若さが重要視されることが多いが、何歳になっても技術と経験でライバルと渡り合える可能性を感じさせてくれるのは、やはり彼なのかも知れない。